労働基準法判例
三菱重工長崎造船所事件1
就業規則に記載のあるストライキによる手当削減は有効か。
事件概要
事業所Y社は就業規則にはあり、20年間「ストライキ期間中に応じて家族手当をも削減する」と規定されていた。
規則は改変の際にこの規定は削除されたが、形を変えた同内容として継続されていた。
改変に当たってこのことは周知はされなかったが、過半数労働組合の了承は得ていた。
Y社で働く労働者Xさんらは労働組合に加入しており、この労働組合の実施したストライキに参加したところ、Y社は前述の規定を理由にXさんらのストライキ期間の家族手当を削減した。
これに対してXさんらはこの取り扱いを不服として訴えを提起した事件。
- ストライキの場合における家族手当の削減が昭和23年ころから昭和44年までは就業規則の規定に基づいて実施されており、その後右規定が削除され同様の規定が社員賃金規則細部取扱のうちに定められてからも従前の取扱が引続き異議なく行われてきたなど、原判示の事実関係のもとにおいては、ストライキの場合における家族手当の削減は労使問の労働慣行として成立していたものであり、このような労働慣行のもとにおいてされた本件ストライキ期間中の家族手当の削減は、違法とはいえない。
まず、押さえておくべき点は「ノーワークノーペイの原則」です。
ストライキ期間中は働いていないので、その期間は「ノーワーク」ですよね。
家族手当が労働の対償にあたるのであれば、この期間分を削減しないとなるとこの原則に反することになります。
Y社としては訴えられる筋合いはないとなりますね。
ですが、家族手当は一般的に労働の対償ではありません。
従って、「ノーワークノーペイの原則」からこのケースは判断できません。
では、裁判所はどのように判示したのでしょうか。
結果をいうと労働慣行として成立していたので違法ではない、という事です。
家族手当の削減規定は20年以上も実施されていましたし、改定時には過半数労働組合の了承により就業規則にも記載されていますので「慣行として成立していた」と認め「違法とはいえない」と判示しました訳ですね。
原則をしっかり押さえておくこと、問題として問われても回答できる判例ですね。