会社Y社には役員と従業員全員が参加する、親睦を目的とした友の会があった。
Y社はこの友の会の代表を「労働者の代表」として36協定を締結し、労働基準監督署に届けていた。

業務繁忙期、労働者XさんはY社からこの36協定に基づいて残業命令を受けた。
しかし、Xさんは体調不良を理由にこれに従わなかった。
更に、XさんはY社の殆どの従業員に「Y社には労働基準法違反の事実がある」と記した手紙を送付した。

Y社はこれらの事を理由にXさんに自主退職を勧告したものの、Xさんはこの退職勧告に従わなかった。
そこで、Y社はXさんが協調性がないことと残業命令違反を理由にXさんを解雇処分とした。
これに対し、Xさんが解雇無効を訴えた事件。

労使協定の締結者の「労働者の代表」という点が明確にされた判例です。
判旨においては
「選出される者が労働者の過半数を代表して36協定を締結することの適否を判断する機会が与えられ」
る事。
かつ
「当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続がとられていること」
の2点を具備することが必要とされました。

つまり、この2点が具備されなければ労働者の代表者と認められません。
今回のように、労働者の過半数を超える者の代表であっても趣旨違いの代表であるから、この者と36協定を締結しても協定の要件を満たさず「無効」となるという事です。

したがって、判決では無効な36協定を基にした残業命令は無効であるため、これを理由とする解雇通知も無効としました。