労働基準法判例
時事通信社事件
年次有給休暇取得と時季変更権の関係は。
事件概要
労働者Xは事業所Yに1か月連続する有給休暇を申し出たところYは担当者がX一人であることから業務支障が出る事、代わりになれる者の確保が困難であることから2週間づつ2回に分けてほしいと願い出た。Yはその上で前半の2週間はXの要望通り、後半については時季変更権を行使したが、Xはこれを無視して就業しなかった。これに対しYは業務命令違反に当たるとしてXを処分。賞与を減額した。XはYの時季変更権は要件を満たしていないため処分無効と減額された分の賞与の支払いを求めて訴えた事例。
- 労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、使用者において代替勤務者を確保することの困難さが増大するなど事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を図る必要が生ずるのが通常である
- 年次有給休暇が長期になると、その期間中の業務量の程度や代替勤務者を確保できるかどうか、他の従業員の休暇の状況など、事業の正常な運営を妨げるかどうかを判断する諸事情を正確に予測することが困難になる。
- 従業員が会社とこのような調整をしないで、長期で連続する年次有給休暇の時季指定を行ったときは、休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、休暇の時期と期間をどの程度修正、変更するかという、時季変更権の行使については、会社にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない。