労働基準法判例
目黒電報電話局事件
休憩時間の自由利用の「自由」とは。
事件概要
労働者Xは政治的コメントを記載したプレートを掲げて仕事をしていた。これに対して事業所Yはプレートを外すよう再三注意を行ったがXはこれに従わなかった。Xは注意に対する抗議目的で休憩時間に抗議のビラを配布。Yはこの行為が就業規則の懲戒処分に該当するとして戒告処分とした。Xはこの処分が法34条3項に規定する「休憩時間の自由利用の原則」に違反するとして処分無効を求めて訴えた事例。
- 従業員は、休憩時間中は、労基法34条3項により、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であつて、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば労基法34条3項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。
- しかしながら、休憩時間の自由利用といってもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。
- また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。
- 一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めととして許されるべきであり、(中略)と解されるのが相当である。
- 本件ビラの配布は、その態様において直接施設の管理に支障を及ぼすものでなかったとしても、前記のように、その目的及びビラの内容において上司の適法な命令に対し抗議をするものであり、また、違法な行為をあおり、そそのかすようなものであった以上、休憩時間中であっても、企業の運営に支障を及ぼし企業秩序を乱すおそれがあり、許可を得ないでその配布をすることは就業規則に反し許されるべきものではないから、これをとらえて懲戒処分の対象としても、労基法34条3項に違反するものではない。
この判例において、労働基準法で保証する「休憩時間の自由」がどのようなものか示されました。
同時に、自由に対する制限も判示されました。
法で保証する「自由」とはいっても、どんなことをしていいというわけでなく、秩序を乱さない範囲でという事です。したがって、事例にあるように企業が秩序を乱すと判断した行為であった場合、その制限が合理的であれば、制限することが出来るとしたわけです。
法の下での自由と秩序維持のための制限のバランスが重要という事ですね。